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サージェリーファースト SURGERYFIRST

サージェリーファーストとは

手術

サージェリーファースト(Surgery First)は、顎変形症の治療における外科矯正の方法の一つで、文字通り「手術を先に行う」治療方針です。従来の顎変形症治療では、まず術前矯正を行い、歯並びを整えた後に手術を行い、術後に微調整の矯正をするという流れが一般的でした。しかし、サージェリーファーストでは、術前矯正を最小限、もしくは行わずに手術を先行して行い、その後に必要な矯正治療を行うことで、治療期間の短縮や顔貌改善の早期達成を目指します。

顎変形症とは

顎の位置や形状の異常によって咬合(噛み合わせ)が不適切になった状態で、上下顎のずれ、下顎前突(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(前歯が閉じない)、顔の非対称などの症状を伴うことがあります。これにより、咀嚼機能や発音、審美的側面、時には呼吸機能に影響が出ることがあります。外科矯正は、こうした顎骨の変形を手術で補正し、矯正歯科治療で歯並びを整える複合的治療です。

サージェリーファーストのメリット

治療期間の短縮

顎骨の位置を整える手術を先に行うことで、骨格的な改善が早期に達成されます。従来の術前矯正を1年以上行う必要がないため、治療期間の短縮が可能です。

矯正治療の負担軽減

歯並びが手術後に骨格に合わせて矯正されるため、従来の術前矯正で歯を大きく動かす必要が減り、矯正治療の負担も軽くなるケースがあります。また、顔の変化が手術直後に見えることで、長期間の術前矯正で感じるストレスが軽減されます。

審美的改善の早期化

顎のずれや突出が手術直後に改善されるため、見た目の改善が早く、心理的な負担が少なくなります。

従来の矯正とサージェリーファーストの違い

サージェリーファースト 従来の外科矯正
適応症例 ・中等度の下顎前突や上顎前突
・顎の左右非対称がある場合
・大きな上下顎のずれ
・複雑な歯列不正(歯の傾斜が極端、重度叢生など)
・骨格変形が重度で、手術前に歯並びを整える必要がある場合
術前矯正 最小限、もしくはほぼ行わない 1〜1.5年かけて歯並びを整える
手術のタイミング まず手術を実施 術前矯正後に実施
術後矯正 手術後に歯列の仕上げ調整 手術後に歯列の微調整
治療期間 約1〜2年(ケースにより短縮) 約2〜3年
見た目の改善 手術直後に顎の骨格改善が可能 術前矯正中は顎のずれが残るため遅い
保険適用 ×(自費診療) ○(健康保険適用可)

手術の種類

下顎枝矢状分割術(SSRO:Sagittal Split Ramus Osteotomy)

下顎骨の後方部分を左右に分割し、前後方向に移動させる手術です。受け口(下顎前突)や顎の左右非対称改善によく用いられます。骨片が安定しやすく固定がしやすい、術後に咬合の微調整を行いやすい、顎の左右差にも対応できるといった特徴があります。

上顎骨前方移動術(Le Fort I型骨切り術)

上顎骨を水平に切り、前方へ移動させる手術です。上顎前突(出っ歯)、開咬、咬合不正の改善によく用いられます。固定プレートで安定させ、術後の矯正で細かく調整していきます。出っ歯(上顎前突)や開咬の矯正に有効で、上顎骨全体を動かせるため、大きな顔貌変化が可能な特徴をもちます。

両顎同時手術(上下顎手術)

大きな顔貌変化や骨格不正がある場合、上下顎同時に手術を行う場合があります。顎全体のバランスを整え、左右差や上下の咬合を同時に改善します。

サージェリーファーストの治療の流れ

STEP01.初診・カウンセリング・精密検査

カウンセリングで患者様のご希望の治療期間や費用をお伺いし、治療のメリット・デメリットや費用・期間・リスク等について丁寧にご説明します。その後、顎や歯の状態、顔貌の写真、X線(パノラマ、CT)、咬合模型を用いた分析を行い、手術が可能かどうか、どの骨切り術が適切かを判断します。口腔外科医と矯正歯科医の連携のもと、精密な治療計画を立案しますのでご安心ください。

※サージェリーファーストは以下の条件を満たすケースで適応されることが多いです。
・顎変形の程度が手術で矯正可能であること
・歯の傾斜や咬合が極端に複雑でないこと
・顎の前後・左右のずれが中等度であること
・患者様の全身状態が良好で手術に耐えられること
・患者様ご本人が治療の流れを理解し、術後矯正に協力できること

STEP02.術前準備(必要最小限の矯正)

歯の並びを大きく変えずに、手術がしやすい状態に整えるために必要な矯正を行います。上下顎の歯の位置関係を手術後に整えやすくするため、ブラケット装着など最小限の矯正を行うことがあります。※この期間は数週間から数ヵ月程度で、従来の外科矯正に比べて短いのが特徴です。

STEP03.手術(顎骨矯正)

上顎骨または下顎骨、場合によっては両方を手術で移動させ、骨の切除や移動後、プレートやスクリューで固定します。顎骨の位置を正しい咬合と顔貌に調整することが目的です。手術時間は骨の部位や手術内容によりますが、数時間〜半日程度かかることがあります。

STEP04.治療中の管理と調整

治療期間中は定期的に歯科医院を訪れ、歯の動きやアンカーの状態を確認します。清潔を保つために、歯磨きやうがい、必要に応じて抗菌ジェルを使用します。まれにネジが緩むことがありますが、その場合は位置の微調整や再設置で対応します。

STEP05.術後矯正

手術後、骨格が安定してから矯正装置を使い、歯並びを最終的に整えます。歯の微調整だけで済むことが多く、術前矯正に比べて短期間で終了するケースがあります。術後矯正期間は通常6か月〜1年程度です。

STEP06.アフターフォロー

顎関節や咬合の安定性確認を確認するため、3ヵ月〜半年ごとの定期的なチェックを推奨しています。必要に応じてリテーナー(後戻り防止装置)を装着します。

術後の経過と注意点

サージェリーファーストでは手術後すぐに顎骨が正しい位置に移動するため、術後の注意点が重要です。

術後1週間〜2週間

  • 腫れや痛みがピークになるため、冷却や鎮痛剤で対応します。
  • 固定によって口を大きく開けられないことがあります。
  • 食事は柔らかいものや流動食を中心になります。

術後2週間〜1ヵ月

  • 腫れが徐々に引いていきます。
  • 下顎や上顎の動きが少しずつ可能になります。
  • 感染予防のため、口腔ケア(うがい、清掃)が重要です。
  • 激しい運動や入浴・サウナは術後2週間〜1ヵ月程度控えてください。
  • 骨癒合を促進するため、安静・睡眠を十分にとってください。

術後1ヵ月以降

  • 骨の固定が安定してきます。
  • 術後矯正を開始する時期です。歯列を骨格に合わせて整えていきます。
  • 顎関節の違和感や軽度の痛みは徐々に改善していきます。

術後3〜6ヵ月

  • 骨が完全に安定してきます。
  • 矯正治療で最終的な歯並びを仕上げます。
  • 顎の機能や顔貌が安定します。

よくあるご質問

手術は痛いですか?

麻酔下で行うため手術中は痛みなし。術後は腫れや痛みがありますが、鎮痛剤で管理可能です。

術後はすぐに食事できますか?

最初は流動食や柔らかい食事のみ。数週間かけて徐々に通常食に戻します。

顔の変化はどのくらいで分かりますか?

手術直後から骨格が整うため、顔貌改善は即座に実感できます。腫れが引くとさらに自然な印象になります。

術後矯正は必須ですか?

はい。手術で骨格は整いますが、歯列を正確に咬合させるために術後矯正は必須です。

費用はいくらくらいかかりますか?

自費診療のため、150〜250万円程度が目安です。病院によって差があります。

サージェリーファーストのリスク

・顎骨手術は一般的に安全ですが、神経損傷、感染、出血、腫れ、術後咬合不安定などのリスクがあります。
・術前矯正がほとんどないため、手術後に歯を正確に並べるための矯正治療が不可欠です。矯正歯科医との連携が非常に重要です。
・骨格のずれが大きすぎる場合や、歯並びの不正が複雑な場合は、従来の術前矯正を行う方法が望ましいことがあります。
・手術で骨格を先に整えるため、術後に顔貌が大きく変化します。心理的に順応が必要な場合があります。